会長挨拶

実践人間学研究会　会長

東海大学　吉岡尚美

　実践人間学研究会の再設立にあたり、僭越ながらご挨拶申し上げます。
　設立趣旨に示されるとおり、本研究会は、ひとを対象とする実践研究の成果を多面・多角的に発表する場を増やし、より多くの情報を共有して現場に還元することを目的としています。「実践」とは、理念や理論をもとに実際に行動を起こすことであり、実践することで効用性を確かめ、ひとつひとつの課題を丁寧に解決することは、「人間（ひと）」を対象としたあらゆる研究分野において実用へのプロセスだと言えるでしょう。
しかし、「実践研究」の対象は様々であり、研究方法や研究規模は多岐に亘ります。研究者、大学院生、現場の従事者は、それぞれが主とする分野の学会等で成果を発表することが多いため、自らの研究を他分野の研究者と共有する機会が少なく、反対に他分野での実践研究を知る機会も限られているのではないでしょうか。他分野の視点は、時に自らの研究を振り返り、方向性を見極め、新しい研究テーマの手がかりを得るきっかけになると思います。
　また、実践研究は、小さな研究の積み重ねでもあります。うまく結果が見出せなかった研究も、その次の実践研究につながるひとつの研究です。対象者が少ない研究も、類似した対象者を持つ現場にとっては貴重な情報となるでしょう。ひとりの対象者をみるケーススタディーは、量的・質的研究ともにじっくり時間をかけてまとめる必要がありますが、そのプロセスを少しずつ発表していくことで、全体を整理する基盤が作れます。
このように、自らが行った実践研究の成果を幅広いレベルで発表する機会として本研究会を活用していただけることを願いつつ、保育・看護・福祉・教育・リハビリテーション・体育・スポーツ・余暇など多種多様な現場、分野からの投稿をお待ちしております。